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花の降る午後に

~宮本輝さんへの手紙~

【7】『命の器』 宮本輝著

宮本輝さま

お変わりなくお過ごしでしょうか?
夏がすぐそこまで来ていますね。
今日は『命の器』を読みましたのでお便り致します。

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この本には33篇の随筆が収められています。
題名にもあります『命の器』とはどのようなものなのでしょう。

『 人と人がつながりあってゆくのは基底部に同じものを有しているからである』  『人間の核を成すものを共有している人間としか結びついていかない』

この部分を読んだ時、長い年月に渡り交友が続く人、いつの間にか疎遠になってしまう人の事を思い出しました。
どんなにこちらが好意をもったり、憧れたりして、一時期は近しくしていたとしても、同じものを基底部に有していなかった人とは続いてゆかないということなのです。
『人間の核』とは、『命の器』に入れられた確固たる芯であり、違った『核』の人同志は重なり合えないのです。少しさびしい気も致しますが、人との出会いや別れの中に純然たる法則があることに気づかせて頂きました。

『人を裏切るな。他人のものを盗むな』
当たり前で聞きなれた言葉ですが、実社会では往々にして起こるものです。
身近に、3年前 息子がそんな体験を致しました。
10年かかって立ち上げ、血の汗を流して育てた起業会社を、あろうことか、親しかった友人だと思っていた人に…
その時、脳裏に浮かんだこの中にあった言葉は、これからの息子の『出会い』こそが、伸びるべき絆となる人々との『出会い』である筈だと。

この本は、実は読まなければ損をする、生き損なうと言うくらいの法則や発見や、真理に満ち溢れています。
悩み抜いた末に掴まれたもの、念じ抜かれた末の想念は、どんなに有難く、読み手にとって貴重な実生活の糧となり得るか。
この本に出会えた私は幸運としか言えません。

いつか近い将来、日本に、いいえ、地球上に『ルネッサンス』が起こらなければ地球は滅ぶ。文化の激しい波を起こさなければ、テロも暴挙も無くすことはできない。
そう書かれていることに、心から賛同しております。
生き生きした文化の興隆を日々強く願っております。

青空と篠突く雨とを繰り返しながら、季節は移ってゆきます。
 陽が長くなりました。そのせいですか気持ちがゆったり致します。
この花は、お忙しい日々に少しの安らぎをお届けできればと思い、
お借り致しました。
お元気でお暮らしくださいますように。
どうかごきげんよう

 

                                清月蓮

 

 

 

新装版 命の器 (講談社文庫)

新装版 命の器 (講談社文庫)