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花の降る午後に

~宮本輝さんへの手紙~

【8】『血の騒ぎを聴け』 宮本輝著

宮本輝さま

お変わりございませんか?
お忙しい毎日、どうかご自愛くださいますように。
今日は『血の騒ぎを聴け』を読みましたのでお便り致します。

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『血が騒ぐ』のは、父母の血脈より来たるもの。
3冊目の随筆集です。
1篇1篇 大切に読ませて頂きました。
今回は大笑いするような楽しいお話も詰まっていました。
声をあげて笑うのは本当に楽しい。それにとても可愛い方だと思いました。

『言葉を刻む人』
ここにはうかうか踏み込むと、文学を学んだ訳でもない素人は、失笑ものです。ですから、読むだけにしようと思ったのですが、今回は思い切って少しだけ。

井上靖さんは、私が高校に入学した頃に、京都で講演会がありました。
演台に立たれ、冒頭に
「私はペンネームを考えた時、静かに立つと言う漢字を探したのですが、残念ながら見当たらないので仕方なく、青く立つ「靖」と言う字にしました」
と仰られた事、その佇まいが本当に静かな人と言う感じで、著作もいくつか読ませて頂きました。それにしてもなんてお優しい話し方だったでしょう。
その井上靖さんは宮本輝さんをとても可愛がっておられたように感じますのは私だけでしょうか。

宮尾登美子さん、田辺聖子さんも、とても親しみやすく、よく読みました。
ここに書かれているお二人へのお言葉は、全てに大きく頷きながら納得出来ました。女の粘り強さ、文学や人生、創造への執念にも似たきめの細かさには、いつも読み疲れるほどです。それに致しましても、宮尾登美子さんはとても美しい方で、田辺聖子さんはあどけない少女のよう…なんて。。。。

中上健次 追悼』
宮本輝さんのお母様が、中上健次著『鳳仙花』を読まれ、美しい小説と仰られたと書かれています。
どこまでも悲しさしか読み取れない私には、なんたるかがわかっていないのでしょう。美し過ぎるのは悲しさを誘うのでしょうか。
ページのそこここに花や木々が登場しますが、「鳳仙花」のやるせなさがぼやけるような気がした記憶があります。
独特の紀伊の方言や、茣蓙を巻くように綺麗に進む展開や、登場する人々の覗き見るような関わり方に、不思議な世界を見たような思いがありました。

中上健次さんと別れる時は、いつも僕が見送るような場面になる…》
きっと見送る時の寂しさに耐えられない方だったから、偶然ではなく、素早くそうされていたような気がして、中上さんの豪胆な振る舞いや、時に噂になった蛮行の陰に、気弱さや優しさやさびしさを隠し持っておられることを、貴方が見抜かれたのだろうと思いました。

『嫌いなもの』
その中の1つ『人生の大事を感情で対処する輩』
私です。
情けなくて思考が停止する、羨ましくて妬けてくる、判断に迷い人任せにする。
その結果、不用意な言葉を吐いたり、黙り込んだり。
感情が治まった時、では、人生の大事は何をもって処すれば良いのでしょう。
ここには書かれていませんが、作品の中に沢山のヒントが隠されています。
貴方の謎に包まれた示唆は未だ未だ読み解けない事柄ばかりです。
こんな日は早めに二階にゆき、また貴方の本を読む事に致しましょう。

この写真は良い夢をご覧になられますようにと、お借り致しました。
白藤の透き通る蚊帳の中にいるようですね。
ごゆっくりおやすみくださいませ。
またお便りさせて頂けますように。
どうかごきげんよう

                                                                              清月蓮

 

 

 

血の騒ぎを聴け (新潮文庫)

血の騒ぎを聴け (新潮文庫)