花の降る午後に

~宮本輝さんへの手紙~

2017-01-01から1年間の記事一覧

【73-2】『水のかたち』宮本  輝 著 《下巻》

宮 本 輝 さま 雪を冠した富士の美しい姿が、この時期だけは、懐かしく思い出されます。それでも、街中の何処にいても、なだらかな六甲山脈が見える関西が好きです。海や山が見えるのはとても落ち着きます。今日は『水のかたち』《下 卷 》を読みましたので…

【73-1】『 水のかたち』宮本  輝 著 《上巻》

宮 本 輝 さま 朝の冷え込みがとてもこたえるようになりました。起きたらすぐに靴下を探してしまいます。いかがお過ごしでしょうか。今日は『水のかたち』《上巻》についてお便り致します。 この写真は、森の中に分け入る「けもの道」のように見えます。物語…

【72】『海岸列車』宮 本  輝 著  《 上・下 卷  》

宮 本 輝 さま 一雨一度の言葉通り、雨の後は気温が少しづつ低くなっております。いかがお過ごしでおられますか。初冬の雨はとても寂しいですが、その分、晴れ渡りますと突き抜けるような青空が、とても清々しいように感じます。今日は『海岸列車』を読みま…

【71】『スワートの男 』宮本  輝 著    《 特別 書き下ろし小説 》

宮 本 輝 さま この秋、日本列島は台風に見舞われ、凄まじい風と、烈しい雨を見つめておりますと、何故か『スワートの男』を読み直したくなりました。これは『宮本輝の本』を購入した折に綴じ込まれていたこともあり、とても特殊な感覚をもって読み終えた気…

【70】『 三千枚の金貨』宮 本 輝 著 《上・下卷》

宮 本 輝さま お元気でおられることと思います。富士山もすっかり雪化粧を見せているそうです。神奈川に住んでおりました頃は、ベランダから冬の富士山を眺めながら洗濯物を干しておりました。富士山の冠雪は日本の冬がとうとうやってきたことを知らせていま…

【69】『寝台車』宮本 輝著 『幻の光』に収録  

宮 本 輝 さま すっかり秋が深まりました。お変わりございませんでしょうか。やっと青空が続いて気持ちの良い毎日です。早めに家事を済ませて、本を読めるのは本当に幸せな時間です。この平和がずっと続きますように。今日は短篇『寝台車』を読みましたので…

【68】『海辺の扉』 宮 本  輝 著  《上・下巻 》

宮 本 輝 さま お元気でおられますか。秋の富山は如何でしたでしょうか。さぞかし充実された日々であっただろうと想像をしておりました。美味しい海の幸も堪能され、空気の澄み切った美しい街並みを歩かれたことでしょう。今日は『海辺の扉』を読みましたの…

【67】『草原の椅子』宮 本 輝 著 《上・下 巻》

宮 本 輝 さま いかがお過ごしでおられますか。季節の変わり目は、体調に思いもよらない悪さをすることがございます。壮健であられますようお祈りしております。今日は『草原の椅子』を読みましたのでお便り致します。 この写真を見た瞬間『ウルタル峰』をつ…

【66-2】『朝の 歓び』 宮 本  輝 著  《下巻》

宮 本 輝 さま お元気でお暮らしのことと思います。朝夕は寒いくらいの日もあり、日中は夏のようです。上着を着たり脱いだりしております。花々も姿を変え、気持ちのいい時期です。今日は『朝の歓び』《下巻》についてお便り致します。 この写真は『大垣老人…

【66-1】『朝の歓び』宮 本  輝 著   《上巻》

宮 本 輝 さま 虫の音が力を増してまいりました。命の限り、力の限り、鳴き競っているように感じます。いかがお過ごしでおられますか。温かいお茶が美味しくて、そばに置きながらの読書は、夜の愉しみです。今日は『朝の歓び』《上巻》を読ませて頂きました…

【65】『ここに地終わり 海始まる』宮本  輝 著 上・下巻

宮 本 輝 さま 身体が涼しさに慣れて過ごし易い毎日かと思っておりましたら、真夏のような暑い日もありました。陽が早く沈み、夕食後の時間がとてもゆったり感じます。好きな音楽を低く流しながら、本を読むのは本当に愉しい時間です。今日は『ここに地終わ…

【64】『にぎやかな天地』宮 本  輝 著  上下巻

宮 本 輝 さま お変わりなくお過ごしのことと思います。暑いと文句を言っておりましたが、秋めいてきますと、毎年のことながら急に心細くなります。寒いのは大の苦手なので、もう少しの間この気候が続いて欲しいものです。今日は『にぎやかな天地』を読み終…

【63】『オレンジの壺』 宮本  輝 著     上下巻

宮本 輝 さま やっと九月に入りました。まだまだ暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでおられますか。八月はお忙しい事と思い、お便りを差し控えておりました。またこうして本が読める事を、嬉しく思っております。今日は『オレンジの壺』を読みました…

【62】『こうもり』 宮本  輝 著     『幻の光』に収録

宮 本 輝 さま ますます暑さが厳しくなっております。札幌に住む姉まで、今年は耐えられない暑さだと申しておりました。そちらは如何でしょうか? 関西では今朝、少し涼しい風が吹いて、一息つけた気が致しました。ですが、日中の暑さは嘗て経験したことがな…

【61-2】『睡蓮の長いまどろみ』 宮 本   輝  著  《下巻》

宮 本 輝 さま 暑く長い夏が始まっています。今年は春から一気に真夏の暑さです。汗をかかなければ、身体から毒素は抜けないだろうと、昼間はエアコンを点けないで過ごしておりますが、たまらなくなると、近くの涼しいショッピングモールを、ただ歩くために…

【61-1】『睡蓮の長いまどろみ』 宮 本  輝 著 《上巻》

宮 本 輝 さま 暑くて寝苦しい日が続きますが、お元気でおられますでしょうか。九州北部を襲った豪雨による土砂崩れは、夥しい流木を橋桁に絡ませ、濁流が民家を襲いました。目を疑うような惨状に現実感を失う程です。被災地に日常生活が戻る日までまた長い…

【60】『森の中の海』 宮 本  輝 著   上下巻 

宮 本 輝 さま 息つく暇もないくらい次々ニュースが続きますが、お変わりございませんか。この本を読み始めた頃、北九州を襲った豪雨のニュースが映し出され「何もかも、のうなってしもうた…」と呆然とされているお年寄りに心が痛みました。今日は『森の中の…

【59】『避暑地の猫』      宮 本  輝 著

宮 本 輝 さま やっと梅雨らしくなってまいりました。次は『森の中の海』を読むつもりでおりましたが、もうすぐ貴方が軽井沢へ発たれると思いますと、急に『避暑地の猫』を読みたくなりました。今日は、私にとってとても難解な作品『避暑地の猫』についてお…

【58】『骸骨ビルの庭』 上下巻    宮本  輝 著

真夏のような暑さが続きました。今年は梅雨入りしてから雨が少なくて、湿度が恋しくおもっております。今日は『骸骨ビルの庭』を読みましたのでお便り致します。 『骸骨ビル』と聞きますと、寂れて壊れかけた建物が浮かびますが、『英国人が設計した堅牢なビ…

【57】『三十光年の星たち』上下巻  宮 本  輝 著

宮 本 輝 さま お元気のことと思います。六月に入りますと、もう少しで軽井沢に行かれることを思い出し、少し寂しい気が致します。お仕事の効率を考えますと、喜ぶべきことですが。今日は『三十光年の星たち』を読みましたのでお便り致します。 曇り空の下で…

【56】『人間の幸福』     宮本 輝 著

宮本 輝さま 真夏のように暑い日が続いたり、少し肌寒かったり致します。たまにハッとして早朝に目覚めてしまう日があります。夜明け前に窓を開けますとひんやりとした風が部屋の中に流れて来て、もう一度眠ろうとしても上手くゆきません。そんな時はそのま…

【55】『不良馬場』宮本 輝 著   『星々の悲しみ』に収録

宮本 輝 さま お元気でおられますか。真夏のように暑い日が続きます。今からこれでは、今年の夏が思いやられます。梅雨が近づいておりますが、あまり豪雨にならないよう祈るばかりです。今日は『不良馬場』を読みましたので、お便り致します。 木々の間で、…

【54-2】『葡萄と郷愁』 宮 本  輝 著 《 角川文庫ー解説について 》  

宮本 輝さま お元気のことと思います。今週は次の作品についてお手紙しようと思っておりましたが、先週の『葡萄と郷愁』の「解説」に少し疑問があります。角川文庫の『葡萄と郷愁』の最後に、連城三紀彦さんが書かれていた「解説」なのですが、今日はそのこ…

【54-1】『葡萄 と 郷愁』 宮 本 輝 著

宮本 輝 さま 暑くもなく寒くもないありがたい季節がやってまいりました。入梅までのこの時期は、清々しくて生き返るように感じます。毎日の散歩が楽しくなりました。今日は『葡萄と郷愁』を読み終わりましたのでお便り致します。 この写真は物語の中の『ア…

【53】『私たちが好きだったこと』  宮本  輝 著

宮本 輝 さま ゴールデンウィークも終わり、休みを楽しんだ人も仕事に追われた人も、日常を取り戻しました。日本がこうして平和である事が本当に大切に思います。今日は『私たちが好きだったこと』を読み終わりましたのでお便り致します。 チューリップたち…

【52】『蝶』宮本  輝 著  『星々の悲しみ』に収録

宮本 輝 さま 季節は流れる雲のように過ぎてゆきます。気温が上がるにつれ体調が上向いていくのを感じております。もう初夏になりました。今年の春は沢山の筍を頂けました。瑞々しい大地の恵みに雨が欠かせないようです。今日は短編『蝶』を読みましたのでお…

【51】『星宿海への道』 宮本  輝 著

宮本 輝さま お元気でおられますか。いつも寝るまでの時間はニ階で長編を読み、昼間は隙間を見つけて、短編や別の長編を読んでいます。暖かい風が吹き、不穏なニュースさえ無ければ、気持ちの良い毎日です。今日は『星宿海への道』を読み終わりましたのでお…

【50】『小旗』宮本 輝 著  『星々の悲しみ』に収録

宮本 輝 さま 物憂い春の光が射しますと、他の季節より遠い昔が蘇る気が致します。吹き出したばかりの新芽に命の息吹を感じます。いかがお過ごしでおられますか。春はお父様を亡くされた季節。私も同じ時期に父を見送りました。その日、火葬場への道には細い…

【49-2】『月光の東 』 宮本 輝著 《その二・『美須寿』の未来 》

宮本 輝 さま 桜の木々を見る度、日本の土壌は豊かで、枝の先まで花をつける力があることに驚きを感じております。自宅の横を走る六甲山グリーンベルトには、山桜と山つつじが同時に咲き始めました。横から眺めると、薄桃色のラインがとても綺麗です。今日は…

【49-1】『月光の東』宮 本  輝 著 《その一・塔屋よねか について》

宮本輝さま 桜が満開のこんな時期に、初めてお便りを差し上げてから一年が経ちました。春は物憂く過ぎています。どうしてか『月光の東』を開いてみたくなりました。去年、興福寺に阿修羅像を見に行った時、太陽神とされるその美しさの底に、言い知れない哀し…